こんにちは!
建物の衛生管理や施設運営にかかわる皆さまにとって、避けて通れないテーマのひとつが「レジオネラ属菌(Legionella bacteria)」です。
ニュースなどで時折耳にする「レジオネラ症」。実は私たちの身近な施設にも潜んでいるかもしれません。今回は、レジオネラ属菌とは何か、そしてそれを防ぐために建物内でどう衛生管理をすべきかを、わかりやすく解説します。
■ レジオネラ属菌とは?
レジオネラ属菌は、水の中に自然に存在する細菌で、特に河川・湖・温泉・土壌などの湿った場所に多く見られます。普段は無害に思えるこの細菌ですが、適切な管理がされていない人工的な水環境で急速に増殖し、人に感染することで問題となります。
感染経路は?
この菌は、汚染された水が空中に拡散したエアロゾル(霧やミスト)を吸い込むことで、肺に入り感染します。食べ物や人から人への感染は確認されていません。
どんな症状が出るの?
症状は風邪に似た軽いものから、**重篤な肺炎(レジオネラ肺炎)**に至ることがあります。特に、高齢者や持病のある方、免疫力が低下している人は重症化するリスクが高く、致命的になるケースもあります。
■ どんな場所・施設でリスクがあるの?
以下のような施設・設備では、特に注意が必要です。
- 循環式浴槽(温泉、スパ、スーパー銭湯)
- 冷却塔(空調用)
- 給湯設備
- 加湿器
- 泡噴出式風呂・ジャグジー
- シャワー設備
- 噴水、人工滝などの水景施設
これらはすべて、水が貯留・循環しやすく、気化しやすい構造になっており、レジオネラ属菌が増殖→飛散しやすい条件がそろっています。
■ レジオネラ属菌が繁殖する条件とは?
- 水温20~50℃(とくに36℃前後で爆発的に増える)
- 長時間の水の滞留
- スライム(ぬめり)や水アカの存在
- 適切でない消毒・清掃
- 設備内部の劣化や複雑な配管構造
このような環境が整うと、菌がどんどん増えてしまいます。
■ 法令とガイドラインで決められていること
日本では、主に次のような法律・指針に基づいてレジオネラ属菌の管理が求められています。
● 建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管法)
- 特定建築物(延べ面積3,000㎡以上等)の管理者は、冷却塔や給湯設備などの水質を定期的に点検・検査する必要があります。
● 厚生労働省「公衆浴場におけるレジオネラ属菌対策マニュアル」
- 循環式浴槽のろ過器や浴槽・配管の定期的な清掃, 毎日の残留塩素管理、水質検査が求められます。
- レジオネラ属菌の基準値は「10CFU/100mL未満(すなわち検出なし)」が目標です。
■ 安心・安全を守るために、すぐできる対策は?
レジオネラ属菌のリスクを減らすには、次のような対策が有効です。
✅ 水質検査の定期実施
年2回以上のレジオネラ属菌検査、水質一般検査を実施しましょう。
✅ 浴槽・配管・ろ過器の定期清掃と消毒
日常的な清掃に加えて、月次・年次のメンテナンスも重要です。
✅ 残留塩素の管理
水中の残留塩素濃度を日常的に測定・記録し、適切な消毒状態を保つ。
✅ 滞留水の防止
利用者の少ない時間帯でも定期的に水を循環・放流するなど、滞留させない工夫を。
✅ 従業員の教育とマニュアル整備
万が一の感染時の対応まで含め、しっかりとしたマニュアルづくりを。
■ まとめ
レジオネラ属菌は目に見えませんが、対策を怠れば大規模な集団感染に発展する危険性すらあります。
しかし、日常的な設備管理と衛生対策を徹底することで、十分にリスクを下げることが可能です。
利用者に安心・安全を提供するためにも、施設を管理している方はぜひ今一度、自施設の衛生管理体制を見直してみてください。
参考にした資料:
- 厚生労働省「公衆浴場における衛生管理要領」
- 国土交通省「建築物衛生法施行規則」
- 日本環境感染学会「レジオネラ症予防対策指針」
ご不明点や、衛生管理のサポートが必要であればお気軽にお問い合わせください!